遠藤コラム第7回「SUNSの個別面談の礎となった、リンク・ワン時代のマネジャー経験」
前回のコラムでは、新たにリンク・ワンという会社に入社し、「考える力・論理的思考」について学んだ体験を紹介しました。
現在、SUNSの研修の中で評価されているものに、「個別面談」があります。
個別面談は、多くのお客さまにご評価いただいており、研修が終了した後も、個別面談のみ継続で依頼してくださるお客さまもいらっしゃいます。最近では研修を実施せず、「個別面談だけの実施」というお客さまもおられます。
私が個別面談で、ご評価をいただけるようになったきっかけを改めて振り返ってみると、リンク・ワン時代のマネジャー経験がベースにあることに気が付きました。
今回は、そのお話をしたいと思います。
部下の退職が止まらない日々
リンク・ワンのマネジャーになり、某・宅配チェーン立ち上げのご支援をさせていただいていた時、私はダメなマネジャーで、部下の退職が止まらないんです。
前回のコラムでお話したマネジメントスキルが欠如していたのも、大きな原因でしたが、もう一つ大きな原因がありました。
それは、本気で「部下・後輩と向き合う」ということができていなかったんです。
当時、退職してしまう部下の多くは、私にとって扱いづらい部下、苦手な部下でした。
ネガティブな発言をしたり、私の意図とする行動に反する行動を取る部下が多かったのです。
思うような結果が出ず、その原因が部下のネガティブな発言にあることを、上司に報告すると、決まって上司から厳しい口調で、「なんで、お前の部下はそのような発言をしたと思うんだ?」、「お前の部下はどういう気持ちだったと思うんだ?」と訊ねられました。
私も扱いづらい部下とは、必要最低限のコミュニケーション「報連相」しかしていないので、部下の心境について、憶測でしか答えられないんです。
すると、上司から「お前は、部下のことを本気で考えているのか!」「お前は、部下をどうしたいんだ!」と、さらに厳しく叱責される日々が続きました。
時には、休日の朝、上司から「部下がどういう気持ちで、このような発言をしたのか、心境を考えてみろ」というメールが届くんです。
「私が上司として、何が至らなかったのか?」その休日は1日中、内省の時間になりました。当時幼稚園だった子どもから、「お父さん大丈夫?失敗しちゃったの?」なんて心配をされたこともありましたね。(笑)
部下の背景に耳を傾ける
厳しい指導のおかげというか、最初は上司に怒られたくないので、徐々に部下の話に耳を傾けるようになっていきます。特に自分にとって苦手な部下の話は、一歩踏み込んだ関わりをするように心がけていました。
現在のモチベーションの話から始まり、不安に思っていること、悩んでいること。これまで生きてきた背景や、これまでのキャリア。
大切にしている価値観、失敗した経験や成功した経験。とにかく色々な話を聴く・・・聴く・・・聴く・・・とにかく聴く。家族やプライベートの話も聴きました。
上司と部下という関係性になってしまうと、時折出てくるネガティブな発言に、つい口を挟みたくなりますが、それを、グッと堪えて、まずは相手の話をしっかり聴く。
「しっかり聴く」とは、例えば、話を聴きながら、その人が生きてきた人生の景色を、私も同じように観て、その時、どのように感じ、どう思ったのかを、私も同じように感じ、共感する。「考える」というよりかは、その人の人生を「感じとる」というイメージでした。
すると、少しずつ自分と部下との物事の見方・捉え方の違いなどが、感じ取れるようになってくるんです。自分の「こうあるべき」「こうするべき」とは違う、部下の「べき」が見えてくるようになりました。
自分や会社が意図する行動とは異なる発言や行動を引き起こしてしてしまう、分岐点みたいなモノが、見えてきたり、感じ取れたりするんです。
そこが見えてくると、部下の発言に対する表層的な浅いアドバイスではなく、部下の内面の、一段深いレベルのアドバイスポイントが見えてくるんですよね。
深いレベルでのアドバイスができるようになると、相手の心を動かせるような真の動機付け、いわゆる内的動機付けができるようになるんです。
時には、部下のために厳しいフィードバックをしないといけない時もありました。
そんな時も、まず事実の背景を部下に聴くことから始めました。
ネガティブな発言こそ、興味を持ってその背景に耳を傾け、受け入れるんです。
すると、少しずつ心を開いてくれる方が多くなり、厳しいフィードバックも受け入れてくれるようになりました。
まとめ
マネジャーになりたての頃は、目先の業務をさばくことで精一杯で、思い通りに動いてくれない部下や、不平・不満を言ってくる部下にイライラするだけでした。
自分のたまった業務を終わらすことだけを考えていて、部下の心境などを感じたり、本音を聴こうとせず、「こうあるべきだろう」、「普通こうだろう」とあるべき論を押しつけていたのです。言ってしまえば、相手の立場になって物事を考えてなかったんです。
そのような私を上司は察していたんでしょう。部下の言葉の表面上の意味だけを捉えるのではなく、その状況や背景、心理状態はどうだったのか、ということを深く読み取るよう、何度も、何度も、厳しく指導していただきました。
現在、私の講師としての印象に、「熱血」「熱い人」という評価を多くいただきますが、その背景には、リンク・ワン時代の「部下と本気で向き合う」という課題に対して、上司から厳しく指導していただいたことが大いに影響を受けていると思います。
この上司とは、現在でも公私ともに大変お世話になっております。
研修講師としてのスキルを高めるために、これまで、コーチングやファシリテーションなど、多くのスキルを学んできましたが、現在、個別面談のご評価をいただいている大きな要因は、間違いなくリンク・ワンでのマネジャーとしての学びがベースにあり、素晴らしい上司に出会えたことに心から感謝しております。
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